「トップマン デザイン」秋冬ロンドン・メンズ ロンドン一の人気ブランドに望むもの

ロンドン・メンズ・コレクションが開幕し、秋冬シーズンのコレクションサーキットがスタートした。

開幕初日にコレクションを発表した注目ブランドは、「トップショップ」が販売するメンズ「トップマン」のコレクションライン「トップマン デザイン(TOPMAN DESIGN)」。今シーズンは、ハイテク技術の登用と、昨シーズン、ウィメンズの世界で台頭した「脱・リアル」とも思える挑戦的なシルエットの2点がハイライトだ。

まずハイテク技術においては、PVC(ポリ塩化ビニル)の多用が印象的だ。トランスペアレント(透明)なPVCは通常なら春夏シーズン、近未来的な雰囲気を表現するために用いる素材だが、「トップマン デザイン」は秋冬に、サヴィル・ローさえ思わせる伝統的なスーツスタイルの中に積極登用。まるでラミネート加工のようにウールコートの上からボンディング(接合)したり、それ単体でポンチョのようなアウターを作ったり。ボンディングは核となったテクニックで、コートやジャケットのポケットもテープを身頃とボンディングすることで成形。レザーとケーブルニットをボンディングしたトップスも提案した。このほかにも金属糸を用い光沢感を高めたスーツなど、コレクションには意表を突く素材使いとそれを実現可能としたハイテク技術が頻繁に登場する。

挑戦的なシルエットは、着る人にちょっぴりの我慢を強いることでピンと伸びた背筋と逆三角形の上半身を誇張するサヴィル・ローシルエットのジャケットと、センタープリーツのワイドパンツが印象的だ。この日コレクションを発表した他ブランドに呼応したかのような、ひざ下丈まで伸ばしたPコートなどは、半年前にウィメンズの世界で幾度となく現れたミッドカーフ(ふくらはぎ)丈のスカートを彷彿とさせる新しいプロポーションバランスの根幹を成す。一方、ブランケットウールで作ったフリンジ付きのGジャン風アウターなどは、これまたウィメンズの世界で勢いを増しているクロップド丈。抑揚の効いたシルエットを提案している。

伝統的なスタイルにハイテク素材を登用するチャレンジ精神、ウィメンズのトレンドを柔軟に取り入れたクロスジェンダーの視点、そして、半年前に比べ格段に増えたバリエーションなど、評価すべき点は数多い。敢えてリクエストするなら、挑戦的な提案は少し控え目に、逆にリアルでキャッチーな要素を盛り込んでもよかっただろう。ロンドン一の人気メンズブランド「トップマン」から生まれたブランドだけに、「トップマン デザイン」は若年層の男子をファッションショーの世界に誘う役割も有している。だからこそ、彼らが一目見て「着こなせない。やっぱりコレクションは別の世界」と思ってしまうのではなく、「ラグジュアリーブランドやアヴァンギャルドなクリエイションにはチャレンジできないけれど、これなら自分でも楽しめるかも」と思わせる”敷居の低さ”があってもいい。